やつしろ法律相談

今回は、物的損害(物損)の慰謝料という問題を考えてみます。例えば、次のような場合です。

① 長年乗ってきた、とても愛着のある車でドライブをしていたところ、追突事故にあって全損してしまった。

② この事故の際、10年間一緒に生活してきた家族同然のペットの犬を後部座席に乗せていたところ、事故が原因で半身不随となってしまった。

①の場合に、車が全損したことによる経済的な損害の賠償を求めることができるのはすぐに分かると思いますが、愛着のある車が全損したことによる精神的なショックを理由とする慰謝料の請求はできるでしょうか。また、②の場合に、犬の治療費分の損害賠償ができることはあまり問題にならないとは思いますが、家族同然のペットが半身不随となってしまったことによる精神的なショックを理由とする慰謝料の請求はできるでしょうか。

一般的には、物損に対する慰謝料は認められてはいません。通常は、物損に対する経済的な賠償がされれば、同時に、被害者の精神的損害も回復されると考えられるからです。ただし、物損でも、一般の常識に照らして、被害者のその物に対する特別の愛情が侵害されたと認められる場合や、その物損が被害者の精神的平穏を著しく害すると言える場合で、経済的な損害の賠償のみでは損害の回復がされたとは言えないようなときには、慰謝料が認められることがあります。

①の場合には、愛着のある車が全損したことで被害者には精神的ショックが生じたことは否定できないでしょう。しかし、それが、一般人の常識に照らして、経済的な損害の賠償のみでは回復されない程度のショックと言えるのかが問題となります。結論としては、この場合に慰謝料を請求することは難しいということになると思います。

他方、②の場合は、ペットは損害賠償を定める民法上は「物」として扱われますが、近時はペットが家族同然の存在となっていることが一般人の常識にもなっていることから、①の場合とは異なって考えられます。つまり、ペットが重大な傷害を負ったことによる精神的なショックは治療費などの経済的な損害の賠償を受けただけでは回復されないものということができ、慰謝料の対象となることがあります。もっとも、ペットの安全装備を付けるのを怠っていた場合などには、一定の割合の過失相殺がされることになります。

________

法律に関するご相談は…

八代綜合法律事務所
〒866-0863 熊本県八代市西松江城町2-8
TEL:0965-33-1327
監修/八代綜合法律相談事務所 弁護士 髙橋 知寛 先生

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です