【“天災”による被害の賠償責任について】
先の豪雨被害で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
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8月と9月は台風が多い季節です。この時期になると、毎年のように次のような相談が寄せられます。
「台風で隣の家の屋根瓦が飛んできて、うちの車に当たって傷がついた。修理代は誰が払うのですか?」
一見すると、台風のような“天災”による被害は仕方がないと思われがちです。しかし、実際には「屋根瓦などを飛ばしてしまった側」が責任を負う場合もあります。
法律では、建物などの構造物が原因で他人に損害を与えた場合、たとえば「以前から屋根瓦が剥がれかけていた」「古いトタンが風でめくれそうだった」など、管理が十分でなく、本来備えているべき安全性が欠けていたときには、民法第717条(工作物責任)により、構造物の所有者などが賠償責任を負うことがあります。
では、こうした責任を問われないためには、どのような対策が必要なのでしょうか。
まず大切なのは、定期的な点検と補修です。屋根瓦や外壁、トタン、雨どいなど、強風で壊れやすい部分を事前にチェックし、必要があれば専門業者に修理を依頼しましょう。また、災害に備えて火災保険などの補償内容を確認しておくことも重要です。 「何も起きていないうちに備える」ことが、責任を避けるための最大のポイントです。
特に注意したいのは、相続した実家などが空き家になっている場合です。
「住んでいないから管理しなくてもよい」と後回しにしがちですが、所有者としての責任は変わりません。もし放置された空き家が原因で近隣に損害を与えた場合、たとえ現在住んでいなくても、相続人が賠償責任を負うことがあります。
相続した家が空き家になっている場合は、早めに管理方法を決め、必要に応じて売却や活用方法を検討することが大切です。 「親が住んでいたから」と手を付けずに放置してしまうと、思わぬ法的リスクを背負うことになりかねません。
台風シーズンを迎えるこの時期、自宅だけでなく、相続した空き家も含めて、“わが家の管理”を今一度見直してみてはいかがでしょうか。
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