あの人に会いたい。File.23

1本のギターに導かれた
音楽と芸能の道

 春の柔らかい日差しが店の前を流れる球磨川の水面に反射し、美しい波紋を描くー。そんな風景を見ながら穏やかな日常を過ごす川﨑龍介さんは、売れっ子俳優の登竜門と言われる戦隊シリーズの第5作『太陽戦隊サンバルカン』で主役のバルイーグルを演じた俳優で、作詞・作曲も手掛ける歌い手でもあります。

 「八代にいた幼少時代は、実家が映画館で映画が常に隣にありました」と語る川﨑さん。小学6年生の時に父からもらった1本のギターがきっかけで、中学1年で友人とバンドを結成。3年生の時には作曲も手掛けるように。音楽好きでバンドを組んでいた父の同級生・編曲家の森岡賢一郎さんに才能を見出され23歳で上京。さらに森岡さんの紹介で加山雄三さんのプロダクションに入社することが、とんとん拍子で決まったと言います。

 運の流れは留まることを知らず、松任谷由美さんの作詞作曲でレコードデビュー。人気テレビ番組「欽ちゃんのドーンとやってみよう」などのテレビ番組にも出演するなど、華やかな世界に身を置く毎日でした。「自分で切望してその座を射止めたというより、何かに導かれるように決まっていった」と振り返ります。

 その中でも存在感を際立たせたのが『太陽戦隊サンバルカン』での主役への抜擢。「しかし撮影に入るときには、これが表に出る最後の仕事と心に決めていました」。この出演を境として、川﨑さんは作詞作曲活動にシフトしていきました。

故郷熊本の風景を歌に乗せて
人の心に響く歌を紡ぎ人生の集大成に

 作詞作曲活動が中心になると、毎月決まった収入があるわけではありません。当時は、レストランやライブハウスのアルバイトをしながら生計を立てる日々。その中で作ったのが懐かしい球磨川を題材にした歌でした。熊本のおいしい焼酎をフレーズに用いた歌がレコード会社の耳に留まり、またしても川﨑さんの歌の世界での歯車が動き出したのです。

時を同じくして体調を壊した父の看病のため帰熊。「歌を作るのはどこにいてもできますから」と、現在は両親から受け継いだカラオケ喫茶『そよ風茶房 游』のオーナー兼、歌謡教室の運営、そして作詞、作曲も続けています。「最後に人の心に響く歌を作りヒットさせたい」と川﨑さん。その歌を携え、若き日に自分の才能を見出してくれた加山さんのもとを訪れる日を心待ちにしています。

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プロフィール
●川﨑龍介さん(73歳)
1952年、八代市生まれ。小学4年生まで八代で過ごし、その後大阪へ。1976年、加山プロモーション入社。翌年「Summer Breeze」でデビュー。歌手活動と併せて人気テレビ番組にも出演。1981年『太陽戦隊サンバルカン』で主役に抜擢。1988年から両親が経営していたカラオケ喫茶「そよ風茶房 游」を引き続く。