やつしろ法律相談

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監修/八代綜合法律相談事務所 弁護士
髙橋 知寛 先生

2018年8月号で特別受益についての記事を書きました。相続の際に、すでに相続分の前渡しに当たるような特別の贈与を受けていた場合には、その贈与分を相続財産に組み入れて計算するという話です。
同じ記事で書いていましたとおり、実際の相続紛争では、生前に贈与があったこと自体に争いがなくても、そもそもその贈与が特別受益に当たるとしても、その贈与分を相続財産の中に組み戻して計算することを被相続人が望んでいなかったという事情があるのではないか、といったことが争いになることがあります。生前に贈与があれば、そのすべてが特別受益として相続財産に組み入れられなければならないということではないのです。

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次の場合を考えてみましょう。
被相続人Aがなくなり、その相続人はXとYの二人の子(相続分は1/2ずつ)です。Xは、高校を卒業後すぐに仕事をはじめ、自分の収入で生活してきました。Yは高校を卒業後、仕事をせず、進学もしないで、Aからの毎月10万円の仕送り(贈与)を受けて生活してきました。仕送りを受けてきた期間は10年間で、合計1200万円になります。この1200万円の仕送り分は特別需給に当たるでしょうか。
そもそも特別需給を相続財産に組み戻すこととされているのは、相続人の中に相続分の前渡しに当たるような特別の贈与を受けている者がいる場合に、相続人の間の均衡を図る必要があるためです。しかし、他方で、一定の親族間には扶養義務がありますので、扶養義務の範囲内の贈与は、相続分の前渡しに当たるような特別の贈与とは言えません。そのため、扶養義務の範囲内の贈与は特別需給には当たらないと考えられます。
そこで、右の事例では毎月10万円の仕送りが扶養義務の範囲内の贈与か否かが問題となります。これはそれぞれの家庭ごとに個別に検討されるべき問題で、なぜ仕送りが必要だったのか、被相続人の扶養能力がどの程度だったのかなどにより、扶養義務の範囲内といえる金額が変わってくると考えられます。そのため、具体的事情によっては、毎月10万円の金額が扶養義務の範囲内であるとされて1200万円の金額が特別受益にはあたらないとされることもありますし、10万円の一部については扶養義務の範囲を超え、その部分については特別受益にあたるとされることもあり得ます。

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このように、相続の際には複雑な問題が発生することがありますので、相続人の間で話しがまとまらないなどお困りのときには、ぜひ弁護士にご相談ください。

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