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【特別寄与料】

 Aさん(50歳・主婦)は、夫の母親を、数年間にわたって無償で介護してきましたが、夫の母親がなくなり、相続が開始しました。相続人は、夫と、夫の兄です。Aさんは相続人ではありませんが、長年介護してきたことは何ら評価されないのでしょうか。

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 2019年6月までは、「寄与分」を請求できる制度により、相続人であれば、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合には、その寄与分を相続分に加えることができました。つまり、上記の例でいえば、Aさんは相続人ではないので、残念ながら長年の介護も財産的評価にはつながりませんでした。

 もっとも、2019年7月1日、相続法の改正により「特別寄与料」の請求ができるようになりました。特別寄与料は、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合に、その寄与に応じて請求することができます。

 とはいえ、誰でも請求できるわけではなく、特別寄与料が請求できるのは、被相続人の親族に限定されます。親族とは、6親等内の血族と3親等以内の姻族をいいます。上記の例でいえば、Aさんは1親等の姻族ですから、長年の介護をしてきたことを理由に、特別寄与料を請求できると考えられます。

 ただし、裁判所に対して協議に代わる処分を請求する場合には、この請求をできる期間は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月を経過するまで、又は相続開始の時から一年を経過するまでに限られているので、注意が必要です。当事者間の協議による場合には、請求期限はありません。

 また、当事者間の協議であっても、介護をしてきたことを裏付ける証拠がなければ、当事者を納得させることはできないでしょう。裁判所に処分を求める場合も、当然証拠は必要になります。日誌をつけるなど、具体的な介護の内容を記録しておくことが望ましいでしょう。

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監修/月出・長嶺法律事務所 弁護士 立山 晴大先生

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