【雨天時の交通事故のリスク回避について】
梅雨の季節になると、雨による交通事故のリスクが一気に高まります。視界の悪化、路面の滑りやすさ、ブレーキの利きにくさなど、運転環境は一変します。
実際に、各種の統計からも「雨の日の事故率は晴れの日の数倍に達する」とされています。たとえば、ある高速道路では、雨天時の1時間あたりの事故件数が晴天時の約4倍というデータがあり、カーブなどの危険箇所では20倍を超えるという報告もあります。
では、こうした現実を踏まえて「雨だったから事故は仕方がない」と言えば、責任は問われないのでしょうか?――答えは「No」です。
交通事故の場面では、事故が不可抗力だったのか、それとも運転者に不注意(過失)があったのかが重要な判断材料になります。そして、雨天時の危険性は事前に十分予見できるものとされており、それに応じた対応をしていたかどうかが問われます。
たとえば、「前が見えづらかった」と主張しても、「それならば徐行や一時停止をすべきだったのではないか」「そもそも進入すべきではなかったのではないか」といった視点で、運転者の対応が評価されます。雨で滑ったことを理由に事故を起こしたドライバーが、「ブレーキをかけても止まらなかった」と主張したものの、「速度が出過ぎていた」「車間距離が不十分だった」として過失が認定されたケースもあります。
このように、「雨だった」という事実があるからといって、それが自動的に責任を免れる理由になることはないのです。
雨の日は、視界の悪化、路面の状況、歩行者や自転車の動きなど、あらゆる場面での危険が増します。だからこそ、
- ヘッドライトの早期点灯
- 通常より長めの車間距離
- 徐行や一時停止の励行
- 冠水道路の回避
といった、より慎重な運転が求められます。
雨天時の事故は「仕方ない」では済まされず、「その状況でどこまで注意を尽くしたか」が厳しく問われるのです。「雨だったから仕方ない」ではなく、「雨だからこそ慎重に」――この意識が、事故を防ぎ、責任を回避する第一歩となります。
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