ローカルは世界につながっている。Vol.02

“原風景は、人の中にある

 7月28日、タイに着陸し、機内で携帯電話の電源を入れた瞬間、故郷・八代を震源とする地震の速報が飛び込んできました。一瞬、何が起きたのか理解できませんでした。時間が経つにつれて被害の全容が少しずつ明らかになり、懸命な救助活動が続けられましたが、それでも多くの尊い命が失われ、八代市民の象徴でもあった八代製紙の赤と白の煙突が崩れ落ちたことを知り、深い悲しみを覚えました。

 前回の連載で、私は登下校の途中に見えていた製紙工場の白い煙を、故郷の原風景として書きました。煙突がなくなったという知らせは、子どもの頃の景色がひとつ消えてしまったようで、とても寂しく感じました。歴史ある建物や文化財も被害を受け、長い年月をかけて受け継がれてきた故郷の風景が失われたことは、本当に残念でなりません。それでも、日本とタイ、それぞれの地域で多くの人と出会う中で感じてきたことがあります。地域を支えているのは建物ではなく、そこで暮らす人の想いであり、誇りだということです。

 失われた風景は戻らないかもしれません。でも、人は新しい風景をつくることができます。未来の子どもたちが、新しい原風景を心に刻める八代へ。私も一人の八代人として、その未来を信じています。

 今こそ連帯しよう、やっちろ!

 

 

 

 

 

 

2021年2月5日(金)、コロナ禍で自宅に泊まれず、初めて宿泊したSUPER HOTELの8階の廊下の窓から日本製紙八代工場を望む。寒さで澄んだ感じと水蒸気のコントラストが美しかった。フロア表示の「8」の数字が窓に反射しているのがわかりますか?

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●にしだ せいじ
八代市出身(四中→南高(現清流高校))。18歳で上京しデザインの世界へ。現在は日本とタイを毎月行き来しながら、地域資源のブランディングや農村支援に取り組む。特定非営利活動法人Yum! Yam! SOUL SOUP KITCHEN代表理事。ローカルの価値を再編集し、世界へつなぐ活動を続けている。