仏門以外の世界を見てみたい 大学時代の経験が今に生きる
真宗大谷派の法燈寺の長男として生まれた田邊真吾さん。「幼い頃からお寺を継ぐ人生を受け入れていましたが、敷かれたレールにそのまま乗るのではなく、一度お寺以外の世界を見てみたいと思うようになりました」。宗門大学に合格していましたが、僧侶の仕事と両立ができる職業も視野に入れ、山梨の教員養成系の大学に進学。「思春期ならではの反抗心もあったのかもしれません」と当時を振り返ります。
大学4年次に中高大と続けていたバレーボールの部活を引退後、健康のためにと始めたスポーツクラブのアルバイトがきっかけでそのままフリーターとして在籍。しかしクラブの経営不振に直面します。戦力として立て直しに関わりその適応力を買われそのまま就職。「クラブでは様々な境遇の方と日々交流しました。運動しに来ているのだけれど、愚痴をこぼしたり、悩みを打ち明けてこられたり。でも、それだけで帰る時には晴れやかな顔になられています。身体的な健康はもちろん、心の健康を保つことの大切さを痛感しました」と語ります。
その後、京都の宗門学院で1年間学び、八代に帰郷したのが4年前。現在は若院として寺業に従事しつつ、これまでの経験を生かしたスポーツクラブのインストラクターに加え、ファストフード、コンビニなど、いくつものわらじを履いて走り回る毎日です。
全ての人の心と体の健康に寄り添う お坊さんインストラクター
その昔、役所や学校、公民館、医療の役割を担う場だったお寺には、常に人があふれていました。「今は、お葬式やお通夜などの時だけ関わる場になりつつあります」。お寺を会場としたマルシェやヨガイベントなどが増えていますが、田邊さんが着目したのは自ら様々なコミュニティーに飛び込み、宗派や檀家にこだわらず全ての人の心と体の健康に寄り添うこと。「これが僧侶としての本来の役割だと思うのです」。
現在、依頼があれば“お坊さんインストラクター真吾ちゃん”として公民館やサークルに出向く田邊さん。体を動かすエクササイズに加え、お説教、さらには悩み相談もできるプログラムとして注目を集め、お寺とは縁遠かった人との出会いの場にもなっているそうです。「企業や介護施設、老人会、子ども会などにも喜んでお邪魔します」と田邊さん。全ての人の“心と体の健康”に寄り添う活動は、今後ますます広がりそうです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●田邊真吾さん(41歳) “お坊さんインストラクター真吾ちゃん”
昭和56年、八代市生まれ。八代高校卒業後、山梨の大学に進学。在学中に始めたスポーツクラブのアルバイト先の立て直しに関わり、28歳で新施設に就職。平成29年大谷専修学院で僧侶の技術、知識を習得。平成30年から法燈寺若院として従事。
コメントを残す