やつしろの働くひと Vol.79

やつしろぷれす やつしろの働くひと

刀工
木村光宏さん(刀工銘:赤松太郎兼光)

日本の伝統美を結集!
10代目の輝き放つ 刀に光と魂を宿して

木村光宏さん(47)。八代工業高校を卒業後、父(兼嗣)に入門。5年間の研修を経て、2002年美術刀剣刀匠技術保存研修会終了。033月、刀匠として認可が下りる。06年新作刀展覧会初出品で新人賞に。昨年、現代刀職展で「水神切兼光写」が最高賞の高松宮記念賞を受賞。

刃物と美術品、二つの顔を持つ日本刀
鎌倉時代の名刀目指して鍛錬の日々

「鉄の強靱さ、漆の繊細さ、金具の優美さなど、日本刀は日本の伝統美を結集した伝統工芸品」。そう語る木村さんは刀工名赤松太郎兼光の名で知られ、昨年の現代刀職展で最高賞の高松宮記念賞を受賞した日本を代表する刀工の一人です。

 木村家はもともと、人吉藩相良家の流れを汲む鍛冶で、光宏さんは父や叔父と共に木村日本刀鍛錬所を背負う10代目当主。「幼いころから父の背中を見て育ち、この道に進むことに迷いはなかった」と言います。4年前に父から事業を継承。「まだまだ父から学ぶことも多く、今でも修業の毎日です」。

 日本刀には伝統的な5大流派(大和伝、山城伝、備前伝、相州伝、美濃伝)があり、産地により作風や工法が異なるのだそう。木村日本刀鍛錬所は、相州伝や備前の技法を取り入れた独自の鍛錬方法を確立。「魂を込めてゼロからモノを造り出すところに刀造りの魅力がある」と木村さん。「砂鉄を溶かし、できた鉄塊を伸ばしては折り曲げる鍛錬を繰り返すことで、強靱な中にも美しさの宿る刀が出来上がる」と付け加えます。

 日本刀の歴史は古く、最盛期は鎌倉時代まで遡ります。「その時代に造られていた刀はいわゆる名刀揃いで、技術的に発達した現代においても、そこには到底及ばない。私たちはそこを目指して日々鍛錬を繰り返している」と語ります。

 火がくべられた作業場は、夏場は50度を超える暑さに。黙々と鉄を打つ姿は正に、後世に伝えていきたい美しき日本の伝統工芸。刀全体の姿(バランス)に加え、刃に映し出される波紋、そして鉄を何層にも折り返すことでできる目の美しさが、刀の出来栄えを図る指標になるのだそうです。

漫画やゲームが刀ブームを後押し
新たな作品づくりにも挑戦

近年、映画や漫画、ゲームを通じて刀ブームが巻き起こり、男性中心だった愛好家の中に女性や海外の愛好家が増加。「ファン層の広がりは本当に嬉しいことです。ただ、まだまだ刀の魅力を知らない方も多いので、展示会などの機会を作るのも私たちの役割だと考えています」。

刀の材料となる鉄や漆、金属の確保に加え、この技術をいかに後世につないでいくかー業界全体が抱える課題を前に「私は新たな作品づくりに挑戦する姿、物づくりの楽しさを見せていくだけです」と前を見据えています。


木炭切りに始まる伝法が守られる神聖な職域。真っ赤な炎に包まれる鉄塊を鍛錬し出来上がりる刀は、一つとして同じものはありません。

令和7年度現代刀職展で高松宮記念賞を受賞した「水神切兼光写」。水神切兼光は上杉謙信が水害を治めるために製作させた逸話があり、20207月の豪雨による大水害が二度と起こらないことを願い製作したもの。

 

お問い合わせ:木村日本刀鍛錬所
TEL:0965-38-9239