あの人に会いたい。File.25

知るほどに魅了される“落語”の世界
「この道で生きていきたい」と決心

「漫才でもなく、コントでもない。漠然とですが、芸人になりたいと夢を抱くようになったのが中2のときでした」と語る伸衛門さん。その想いを高3になるまで誰にも告げずに温め、進路選択の際に迷わず選んだのが〝落研〟のある國學院大學でした。入学したその日、自ら門を叩いたのが落語研究会。その日を起点とし伸衛門さんは、〝芸人〟という夢を現実へと手繰り寄せていきました。
「ほとんど授業には出ず、毎日寄席に通っていましたから」と笑う伸衛門さん。ばかばかしい話から、世相を反映した考えさせられる話、怪談など、さまざまなジャンルがある落語の世界。しかしどの話にも必ず、人を傷つけない笑いがある。同時に前座から始まり、漫才にマジック、生演奏など次から次へと展開する寄席の空間にも魅かれていきました。「ここには、テレビに出ている有名人から、若手で頑張っている人、無名だけれど格段に面白い人などが同居しています。その中で一人ひとりがそれぞれの役割を果たし、この空間を作っている。自分もこの世界で生きていきたい」と心を決めました。
大学を中退し、ようやく自分の胸の内を両親に話すと、「どういう生き方をするかは、自分が決めるべき」という、温かくも心強い父の言葉が伸衛門さんを後押し、落語家という芸の道へと一歩を踏み出すことになりました。

八代拠点にこども落語教室開催
多くの人との交流で落語に新境地

2006年に春雨や雷蔵師匠に入門し、見習い〜前座〜二ツ目の半ばまでの約10年を過ごした後、2016年に桂伸治門下となり、2020年に真打に昇進。「実は雷蔵師匠の前には柳亭市馬師匠の下で10カ月間見習いをしていました。3人の師匠に師事するというのは落語界ではかなりのデコボコ道と言えるのですが、どの師匠からもたくさんの事を学ばせて頂き、本当に感謝しています」。両親の出身地である八代では2013年から『こども落語教室』を行い、2016年から真打になるまでの4年間は本町で『ワンコイン寄席』を毎月開催しました。
「八代での活動は、自分を変えてみたいという想いからの決断でした。振り返ると、芸の上達というより、八代に人として育ててもらった気がします」と伸衛門さん。「この地での縁をつなぎ、多くの人や地域とコラボしながら、落語の新たな境地を切り拓いていきたいです」。

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プロフィール
●桂 伸衛門さん(43歳)
1983年、千葉県習志野市出身。2006年、春雨や雷蔵に入門。前座名「雷太」。2010年8月、二ツ目に昇進。2016年3月から桂伸治門下となり、「桂 伸三」に改名。同年から両親の出身地八代に拠点を設け、毎月の公演や子ども向け落語教室、慰問公演などを行い、地域の活性化に力を注ぐ。2020年5月に真打昇進。「桂 伸衛門」となる。